目の前の幸福

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もう、10年以上の付き合いになるインド時代からの友人で、子供を4人も産んで長野県に疎開して元気に暮らしているお母さんがいます。彼女の旦那さんも、彼が彼女と出会う前からの知り合いで、とにかく夫婦共々共通の知人が多い。
彼女の誕生日に祝いのメールを送ったら自分の体を気遣ってくれる言葉が返信であったから、周りも無茶するなと言うから気をつけています、と書いたところ、いい仲間がたくさんできたようで良かったね、と返事が返ってきました。

それを読んでから少し考え込みました。
現実はちょっとばかり違うし、そこにいろんな意味合いが凝縮されている、という思いが一瞬で洪水のように胸のうちに広がっていったから。


その、長野に住んでいる友人夫婦は、たまに連絡くれるのは奥さんの方なのですが、彼女は私が知った頃は20代前半で、なんと言うか初々しい若者オーラの娘感がまだたっぷりで、失礼ですが、ちょっと都会育ちの尖った雰囲気も私は感じていました。当時の私はすでにインドの山の中に長らく暮らしていて、日本人との接触も少なかったから、そういうギャップで余計にそう感じただけかも知れません。

だけれど、今は気持ちの上で自分よりはるかに年下の彼女にまるで頭が上がらないのです。こっちが病気になって狼狽えたり、離婚時にドタバタした経緯も全部向こうは知っていますし、その間にも損得勘定抜きで心強い励ましの言葉をずっと送ってきてくれた相手だった、というのもあります。
そして、彼女の短い自然体の言葉で語られる一つ一つが、人間味の豊かさ・心の広さを痛感させられるものばかりであって、それがまったく背伸びしたり気取ったところがないので、余計に敬服させられるのです。
人間てたった数年間でこんなに大きく変わり得るものなんだなあ、といい意味で驚かされました。
彼女は「子育てって、本当に超楽しいから」と言います。しかし男の子ばかり4人、そしてそれが人並みな努力だけでは済まない事情も含まれているのを私は知っています。

私自身は病気も抱えているので、もう家族は作れない、と考えています。
責任が負えないし、そういった理由で前の結婚相手の家族からも離婚を勧められた、というのもある。もちろん、もっとすごいことが色々ありましたが、そこは忘れないと私もやっていられないので一々書きません(笑)。
ともあれ、やはりそうした自分が置かれた現実や人生の経緯の上で決まってくる態度というのは自ずとあるものです。外部の人たちにあいつは私のマブダチだとか、あそこは仲間だ、と大きな口で公言できるほどの身近な存在は、実は周囲に一人もいないくらいなのが自分の現実としてはありますが、それは別に都会に暮らす単身者として大して珍しくもない話です。最期は家の中で孤独死するか、そうでなくとも一人で生き一人で死ぬ覚悟をしていくしかない。
だから、違う形で、悔いを残さないように生きなければならない、というのが私の残りの人生のテーマではあります。それが自身で一個一個選択してきた結果としてあるのだから、もう仕方がない。

でも、人様の家庭のことなので詳細は省きますが、彼女たち一家も、東日本大震災以降、決して順風満帆な人生ではなかったようです。
たくさんの子供を抱えて移住したり、生計を立て子育てしていく上で、愛情いっぱいなお母さんだからこそ大きな悲哀もその間にはあったようで、でもその上で、平和で愛情に満ちた暮らしを移り住んだ先でも自分たちの力で築き実現しているのだから、圧倒されます。他人が妬みを入れる隙間などない、地位やお金では代えられない人間としての価値を確実に持っている人たちである、と感じます。


それにしても変な世界です。
平和で健康に愛情豊かな人生を送れれば、それで人間は十分なんじゃないか、と私は思うのだけれど、お金や名声を求めてそれらを台無しにする人もいる。そして、そんな人たちが世の中を動かしていたりします。
国を守るだの、日本の未来を創るだの、口先では立派なことを唱えて社会正義に燃えているようでも、何かの組織が勝っていくことや、こっちにつけば次も議員に当選できるとか、また、そうした人とお近づきになれば何かしらの便宜を図ってもらえるから接待するとかされるとか、そんな鍔迫り合いに一生懸命だったりして、それが政治の世界で生きていくことだ、洗練された「大人な」態度だなんてさえ語られていて、それで勝ち残った連中がおかしなふうに世の中の仕組みの決定権を持つところから慢性的に腐っていく。

それじゃいけないから、と頑張る人たちも、それぞれ元から自分が不幸だったりする人が多い気がします。だから人生や生活を投げ打ってまで身を削ってそういうことに関わったりする。
でも、帰っていくべき、平和な幸福を元から知らないまま頑張っていると、その人たちの一生懸命は万民の求めるところともまたいくらか違ったりもして。
だからこそ、腐敗を糺そうとしている人たちが、一瞬で平和や愛情って次元じゃない、自分たちの狭い世界の中での権力闘争や駆け引きに没頭して、どこを向いているのかもよく分からなくなる、なんてことも少なくないようです。

それでも誰かが、誰かがこれじゃおかしいよね、って、自分だけの人生を謳歌する以外の使命感や責任も持って始めなければ世の中全体が根元から腐っていくんですよね。
綺麗事ばかり唱える割にはなんだかよく分からない党派間・利権毎の確執が見え隠れしていて、大抵の人はその内実を一々確かめていられるほど暇でもなければ機会もない。だからと言って、面倒だから、胡散臭いから関わらない、ではゆっくりと沈没する船みたいな格好に社会がなっていく。

でも、見方を変えれば、私たち一人ひとりが他人任せにしているから、「へえ、あんた平和運動やっているの、じゃあ頑張ってよ」「原発が危ないってのは分かるんだけど、なんか目立ちたいだけなんじゃないの?」なんて、何もしないで偉そうにしているから、こうしたひずみも大きくなってしまう訳で、文句はあるのに他人事にしたまま、というのは道理に合わない、と気付く必要はあると思います。

一人一人の、自分たちが住んでいる世界をよくしよう、という気持ちが、少しずつ大勢で共有できるようになれば、そんなことにもならないはずだと、みんなで気付いていけるきっかけ作りが大切なんでしょうね。
特定の人たちが少数で抱えようとすると、今ある現実の歪みの中で対処しなきゃならないから、ミイラ取りがミイラになるようなことが多発する。
とりあえずは、腐敗した政府や行政機関、大企業、無茶な政策などといった大きなものに向かっていく訳だけれども、本当はその人たちの身の回り、当たり前の現実が、平和で愛情に満ちたものになることが一番です。
頑張っている人たち自身も、必死で辛い思いばかりしていたら、そのうち毒が回ってよく分からないことになるのだと思います。

でも同時に、ただ臭い物に蓋をして黙っていたら、その人たち自身が忘れたいと願った悩みに押し潰されてアルコール依存症になったり、貧困ビジネスの餌食としてギャンブル中毒になって家庭を壊す夫となったりしてしまう、ということがあるのです。
職場で長時間労働の末にパワハラに遭ってうつ病になったとか、非正規労働者でただでさえ貧乏していたのに不当解雇されたとか、障がい者で、或いはたまたま犯罪者の家庭やLGBTに生まれてくるなどして、ずっと差別されてきたから、といった様々な理由で、目の前の歪んだ社会の現実に向き合わないと、否応なく悪くもないのに逃げ回って生きているような後ろめたさがついてきてしまう格好になる人生もあります。
それは半分は当事者の心の在り方次第ですが、半分はやはり環境がその人たちを際どいところまで追い込んでしまう、というのでもある。この世の闇は深く、表面的に眺めていたら何も満足に見えてこないまま、自分も差別や抑圧に加担し兼ねない複雑さが実在します。

でも、これだけははっきりしていると確信しています。そもそもそんな人たちがいない社会にすることが本来目指すべき場所。
目の前の幸福も忘れない、難しいけど、やっぱりそういうことなんですよね。
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by catalyticmonk | 2016-02-02 21:56 | 忘れ物 | Comments(0)


溢れ出る部分を勝手にやっています。異端者のあなた、多分私はあなたの味方か仲間です。 河元玲太朗


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