カルトとマイノリティー

ロシア最高裁判所は4月20日、キリスト教団体「エホバの証人(Jehovah's Witnesses)」の活動を禁止し、資産を押収する判決を下したそうです。最高裁は、ロシアは「エホバの証人の本部と傘下の地方組織」の閉鎖と「資産の没収」を決めたとしました。

「資産の没収」って、普通なら大規模な宗教弾圧そのものですが、まあ、カルトなのは事実だし、でもカルトなら弾圧してもいいのか、という問題でもあります。
実際にはどのような実態で、どれだけのパブリックへの悪影響があったか、については、目にした短いニュースの文面の中ではなかったのですが、やはりカルトなので制裁は仕方ない、という感想は日本でもあるようです。

そういう断定性に対してエホバの証人を擁護したい訳ではないのですが、私にとっては、そんなに簡単に白か黒かを断定的に言って済ましていい問題のように思えません。
カルトに巻き込まれた被害者だ、と感じる立場の人の気持ちも分かる反面、思想信条や信仰の自由に社会が公共の装いを纏ってどこまで干渉していいかは、やはり個別に慎重な姿勢で吟味する必要のある話だと思います。

前にも書いているのですが、私の幼い頃、実母はエホバの証人に一時期入信していました。近所にエホバのコミューンがあって、その影響と、実母自身が膠原病という免疫不全の病気だったためです。
私が覚えているのは、そのコミューンの古い日本家屋で、聖書の物語を紙芝居で教えられた事くらいで、周囲の大人を変な人達だと特に感じる事もありませんでした。優し気な人達しかいない印象でしたが、それは小さい子どもにとっての話ですから、全然定かではないでしょう。
ま、私が宗教と聞くと仏教ではなくて、まず神がいて、という発想を当然のものとして連想して、仏教の観念は総じてピンと来ないのは確かに影響があったかも知れないけれど、それ以上のものでもないのです。

ただ、私の母が勧誘した事で母以上に熱心な信者になった人物に私の幼なじみの女児である「かよちゃん」の母親である「かよママ」がいたのですが、その彼女がバイク事故を起こした際に、教団の輸血拒否の教義に従って大変だった、という話は当時も聞きました。
彼女は一命は取り留めたものの、やはり信仰の問題も手伝い夫婦の仲が難しくなって夫と離婚し、私が小学校に入る前に同い年のかよちゃんを連れて隣接する名古屋市に引っ越して行きました。

エホバの証人が一般社会の常識から逸脱していると扱われる場面が多い理由は、ある意味、特異で原理主義的でもある聖書解釈や進化論さえ否定する独自の世界観の影響が大きいのですが、その中の一つとして有名な輸血拒否も、それほど珍しい事例ではなく、頻繁に発生している、という現実だったのでしょう。
個々人の内面的な信仰の自由と見做すか、カルトであるとして、輸血拒否などの判断をする集団に圧力をかけるかは、実は境界線の曖昧な難しい問題でもあります。

母にそれほど決然とした宗教的覚悟があったとはまるで思えません。ちょっと東京などの都会の感覚では理解しにくいかも知れないのですが、なんか田舎社会の、とんでもなくゆるい宗教感覚だったのだと思います。
母がその時期に私の養育を大部分任せていたのは、地元の地主農家で、浄土宗である母の実家だったのですが、そこと母の間で、宗教的な事柄で対立している空気なんて一切ありませんでした。
母は私が小学校に入る前にエホバをあっさり止めているので、本当のところは分かりませんが、まず父も母も宗教道徳云々なんて真摯なモラルを持ち合わせている部類の人種では到底なかったのです。
父は、右翼的な折衷主義の宗教観の持ち主で、でも結局のところ選民思想と言ってもいいくらいに極端な先祖崇拝を自身のプライドに結びつけている感じでしたから、もっとなんだかよく分かりませんでした。

そういう精神性の茫洋とした人達の現世利益的な願望を吸い寄せやすい宗教というのはある気がします。コアな人達はかなり本気で信仰していたとしても、です。
例えば、チベット仏教のお坊さんとか、プロテスタントの学者の方とか、自身の信仰心と乖離しない精神で物凄く高度で緻密な思弁を繰り広げたりする方が大勢いらっしゃいますが、同時に日本の明治維新以降の新宗教系の家庭に育った人が、私から見て極端な主張や飛躍した発想に聞こえるニューエイジ思想・ヒッピー文化に傾倒する例もたくさん見てきていて、明らかに通常以上の比率なんですよね。
どちらが上か下かという話ではなくて、社会的に安定した地位を自身の所属する宗教共同体が占めていない場合、そうしたバックボーンが出発点にある人は多かれ少なかれ、独自な思索や発想を持つようになるパターンも多い気がします。
なんかぶっ壊れている人物が多い印象は否めないのですが。

現在の日本の新宗教の大教団の多くは1920年から1950年に成立し、それなりの共同体の規模と歴史がある訳ですが、独自の世界を持っているからこそ、そこの中の成員はマイノリティーとして育つ、という現実が、自ずとそういう結果に繋がっていくのでしょう。

元々安定していない家庭が特にカルト的なものにも抵抗薄く近づいていきやすいのも事実なんですね。
平凡という名の既定路線から一旦外れると、一定の家族の間ではとことんアブノーマルな要素が高密度で折り重なっていく、というね。
ある種、ユダヤ人もそんなものだと思うのです。だから、彼らは独創的な才能を持つ人材をその緊張感の中で高い頻度で輩出したし、反面、精神疾患の発症率が高い事でも知られています。
それは遺伝なんて優生学的な事象ではなく、社会学的・心理学的次元の要因が大きい話です。

カルトなら社会的制裁を加えていいのだとしたら、その線引きや程度はどこにあるのか。誰が決められるのか。
とても難しいテーマだと思ったからこそ、全体としては私の実体験や見聞きしてきた具体的な現実から感じたものを軸にして、いくらか書き出してみました。
答えは一人一人の方に考えてみて頂きたいところです。

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by catalyticmonk | 2017-04-22 03:49 | 異端者を作り出し疎外する社会 | Comments(0)


溢れ出る部分を勝手にやっています。異端者のあなた、多分私はあなたの味方か仲間です。 河元玲太朗


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