カテゴリ:地元意識と首都( 1 )

地元意識と首都

e0296801_1565119.jpg
全部ではないにしても、かなりの回数、ここに書かれていることと似たことを言う東京人に会ったなあ。

東京生まれ東京育ちが地方出身者から授かる恩恵と浴びる毒 ~前篇~
http://janesuisjapanese.blogspot.jp/2013/08/vol13.html


ある人は「地方から出てきた奴がブラック企業で詐欺にあったとか、ノイローゼや鬱になったとかぎゃーぎゃーほざいてるのを当たり前のように聞くけど、ちょっと待ってくれ。それって、俺の地元をおまえ達が荒らしてるんだ。いやなら、とっとと田舎に帰れ!って思うよ」と言っていて、それはちょっとあまりになあ、と思ってこう反論したことがある。

e0296801_2382548.jpg「いや、地元地元って言うけどさ、君さ、まず日本が凄い中央集権国家で、地方と首都圏で全然平等でないって現実も考慮しないと。
そりゃ、君はよそから来た人間に地元を荒らされてるような感覚で気に入らないんだろうけど、東京で生まれ育って受けている恩恵については、きっと不満を感じる部分のこと以外は地方との差についてそれほどリアルに感じれてないと思うんだよね。

いろんな大企業の本社が集まってて、学術機関でも文化的発信源でも、影響力の大きいものは圧倒的に東京に集まっているし、海外への窓口という点でも群を抜いている。
でも、それって東京のオリジナリティーでもなんでもないんだ。やっぱり恵まれている部分は中央集権国家の首都だから、ってところが絶大なんだよね。
俺もおじいさんは東京タワーの下にあった学校出てるし、おばあさんは日本橋生まれだし、親父も途中まで東京で育っているから関東人の気質とか性質ってのは分からないでもないんだけど、関東人の親父がことあるごとに東京と比べて愛知県を小馬鹿にして見下しまくっているのを子供の頃から聞いて育ってきて、病弱だったお袋に代わって自分の世話をしてくれた母親の実家は愛知県の農家なものだから、なんでそんなに馬鹿にされなきゃいけないんだろう?ってずっと考えてはいたな。

俺は田舎からダイレクトにアメリカで働いたり旅したり、って人生の始まり方だったから、東京に『憧れた』ことは一度もないんだけど、それでも東京に納まったのは、この国が地方に行くと極端に多様性が欠けていて、帰国して即お話にならないように感じたからだ。それも傲慢だけど、若い当時の俺は端的にそう思ったよ。
しばらく田舎の工場とか名古屋の東急ハンズで働いてみたけど、もうただでさえ日本の同世代の若者と感覚がかけ離れてしまっているのに、趣味や話題が車かカラオケか、女の子の話か、テレビのスポーツ中継や好きなタレントのことか、なんて調子で限定されていたら、なんかどうしようもなくてね。
東急ハンズで働いている他の若い子達も実家暮らしじゃなきゃ生活も成り立たないような低賃金で働かされているのに、周りに文化的な若者らしい仕事があまりに少ないものだから、まるでささやかな避難所を見つけたように寄り集まってやっててさあ。彼らには悪いけど、そんなの当時の自分からするとメチャクチャ狭い世界や価値観に感じたから、なんかもう見てて哀れなくらいでね……。それも今考えれば余計なお世話でそんな見方するガキこそ世界が狭いんだけど、とにかく当時の俺はそう感じたんだ。

でさ、俺は建築現場とか倉庫とか警備員とか、そういう労働者の生活も体験してきたから分かるんだけど、実際帰れったって帰る田舎ももうない、って人も結構多いんだよ。
田舎ほど家族とか実家の持ち家とか地域とのコネとかないと簡単に入っていけないことも多くて、これまた中央や都市部集中の影響で過疎化や高齢化で錆びれていって仕事も少なくなっているところも多いしさ、じゃあ、それをお前が戻っていって変えろよ、って言われても毎日の暮らしで手一杯の貧乏人、搾取労働者はそんなゆとりもないわけだ。こっちで家族持っちゃってると違う意味でも動き辛くなるしね。
そういう不平等・不公平が大きなところであるからこそ、ブラック企業で過労死するまで無理して働かなきゃいけない人達や、家族や病気の子供抱えてもがいているうちにリストラにまで遭って、うつ病だ自殺だってなっている人達だって大勢いるんだよ。」

彼は話をよく飲み込めなかったようで、「でも、それはそっち(地方人)の都合で、うちら(東京人)には関係ないじゃん」というようなことを途中で言ったと思う。まあ、火に油だった。

e0296801_27447.jpg「だ・か・ら、うつ病や過労死するまで働いている人達全員が何か甘い夢見てるから東京に居残っているわけでもなくて、君達東京の人が何か悪いって言ってるんでもないけど、そうやって首都や都市部が発展する陰で錆びれる一方の田舎に帰りたくても現実帰れず、中央集権国家の職のある場に留まらざるを得ず、ある意味、国家が一極集中していることの犠牲者である場合も多いんだよ。その果てに病気や障害者になったって社会のお荷物扱いだしね。
あと、東京を荒らしているどころか、そうした人達の多くが楽しくもない底辺の搾取労働を過酷な条件で担っているからこそ、東京の繁栄が成り立っているという面があることを忘れないで欲しい。それをイヤなら地元へ帰れってね、俺達は使い捨てカイロじゃないんだよ?
東京が首都としての様々な特権を享受するために、その裏でどれだけの社会的犠牲を強いているかも考えずに、そういう地方人を邪魔なゴミみたいに言うのは、いくら君でも看過出来ないな」

「い、いいいいや、そういうのは分かんなかったな。俺も学生時代にしてたバイトは限られてるしねえ。そんなつもりで言ったんじゃないんだよ」
実際、私がこんな鬼気迫る調子で捲くし立てたものだから、彼を恐縮させてしまった。
私も思っていることを言ったまでだったが、彼は自身の実感を軽い調子で深く考えず言っただけなのだろうから、少し言い過ぎたな、と後から反省した。私はスイッチが入ってしまうと毎度こんなふうだ。
と言っても、このように自分の感じていることを整理した考えとしてきちんと主張出来るようになったのは、三十代も半ばを過ぎてからようやくであって、こうしたことを感じていても上手く言葉として言い表せないでいる、今なおもどかしい思いの地方出身の若者も少なくないはずだ。


しかし、東京人が地元を荒らされている、という意識も、もっと人間として普遍的な心理作用のレベルとしてならすんなり理解出来るし、私自身共感さえ覚えるような、どこにでもよくある話だとも思う。
やはり私の個人的な実体験を書いて説明した方が話は分かりやすいかも知れない。

私が預けられて育った母の実家は、農家ながら地元のかなりの旧家で、名古屋市の港区などの工場にも土地を貸していて、複数の不動産物件を持つ地主であり大家でもあったから、相当地元意識が強い家柄でもあった。
そして、私の育った時代は名古屋の工場などに働きに来た他の地方出身の家庭が地域にどんどん流入してきて、古くから地元に住む愛知県尾張地方の農家の家族と彼らが何世代何十世代にも亘って営んできた地域との係わり合い方や風習といったものを、新参者達が数の力に任せて否応なしに風化させ圧迫している、そうした状況が猛烈な勢いで進行している真っ最中だったから、地域社会は水面下でかなり陰惨な対立を抱えていたようだった。
「ようだった」というのは、私が子供だったこともあって、そうしたことに薄々気付きながらも相対的には相当鈍感だっただろうことを何十年も経つと実感するからだ。ただ、私が鈍感でいたのは、元々の性質に加えて家族の半分のルーツは関東という他地域にあった点も大きかったのかも知れない。
しかし、私が預けられて育った母の実家自体は、地域の旧家の、そのまた本家だったので、古くから住む地元民の目は違ったようである。
例えば、近所の農家の軒先のみかんを盗もうとしていたら逆にその家のおばあさんが出てきて、たくさん捥ぎって袋に詰めてくれた上、上がっていけと言われてお茶と饅頭を出される、私が顔を覚え切れもしないそこら中の地元農家の家が幼い私が家に上がりこんで遊び回るのを許してくれる、といった按配で、そのすべてとは言わないまでもかなりの割合の老人が私を己れの孫のように可愛がってもくれて、何かとVIP待遇だった。が、他地域からの流入家庭の子であるほとんどの学校の同級生にそうした話をすると、毎回そんな話は初めて聞いたという体でびっくり驚かれて、そこでこちらも初めて自分がVIP待遇であることに少しだけ気付く、といった感じだった。
また、どう考えても私とタイプも違えば気も合わない一部の同級生から妙に長年親しくされていたが、それも後年考えると彼らは皆地元民の家庭の子供だった。
まあ、私がどれだけ鈍感な子供だったか、分かろうというものである。


e0296801_211122.jpgでも、こういうのも要するに多様な価値観をお互いに認め合って、どう折り合いをつけていくか、ということに尽きると思う。
もちろん東京人全体に対して何か批判しているということは一切ない。文化的周縁部としての田舎と都会の間にある地元意識の微妙なもつれについて、自分なりに感じているものをなるべくいろんな要素を踏まえて書こうと努めたつもり。
こういうことは白黒単純に言ったら、いつまで経ってもそれぞれの立場の水掛け論に終始してしまうものだと思うのだが、やはり簡単に理解し合えないまでも、その糸口を模索していくことが大切なんだろうと私は感じる。

流動化する社会が互いに穏便に折り合いをつけるプロセスの大きな障害になっているものは、やはり経済最優先、といった要素が一番大きいように思う。本当、金、金、という姿勢は何より人間とか文化のデリケートな部分を根こそぎにしていく狂暴さがあるから、実はやっぱりそういうところの問題が地域社会やそこに住んでいる人々、社会全体の構造に影響を及ぼして具体的に出てくると、個別にはこういう話になってくる、という側面も否めないような気がする。
e0296801_2243026.jpg

[PR]
by catalyticmonk | 2013-08-18 23:33 | 地元意識と首都 | Comments(0)


溢れ出る部分を勝手にやっています。異端者のあなた、多分私はあなたの味方か仲間です。 河元玲太朗


by catalyticmonk

プロフィールを見る
画像一覧

カテゴリ

全体
インド生活
貨幣経済
学校教育
チャップリン
経済開発と環境破壊
忘れ物
輪廻転生
言論の自由と情報リテラシー
自己経歴
名古屋及び尾張地方の土地柄
貧困差別・人権教育
不安夢
旅の糧
異端者を作り出し疎外する社会
瞑想センター
大量消費社会の本質
読書
Drawling Stone
ネアンデルタール人
盗作事件
プロパガンダ報道
ゆとり社会
皆影響され翻弄される
人間は必ず過ちを犯す
地球人
優越感の生物学的功罪
グローバリゼーションと全体主義
衆愚政治の回避と個の確立
季節の変わり目
ネグレクト、児童虐待
生と死のリテラシー
宗教の救済性と排他性
地元意識と首都
ブラック企業
反戦
湯宿ファンタジー
福島第一原発事故
陰謀論とオカルト
魔女狩り
性の分断
ジェンダー
依存症
ネオテニー論
ゲマインシャフト
希望社会
意思疎通
メディアリテラシー
個の尊重と人権
イスラエル
風俗業
集団的自衛権
嫌韓嫌中
サイコパス
ごみ屋敷
呪術
ファッション
食品添加物
ポジティブ思考
表現の自由
太鼓持ち芸人
無縁社会
経済と個人の実存
ヤンキー文化
精神医療
監視社会
相互抑圧
思想の自発的更新性
消費課税
高度情報化社会とSNSに感ずる諸々
草の根市民運動と選挙
マイノリティー差別
喫煙
人間の尊厳
支配構造
地震
食事
セクシャリティ
推敲
オトコ
アイドル
未分類

フォロー中のブログ

最新のコメント

https://www...
by catalyticmonk at 14:52
しかし、この内容でFac..
by catalyticmonk at 13:08
そう、普段の生活からやっ..
by catalyticmonk at 02:00
日本人って、価値観が異な..
by あ# at 16:50
分かります。 それが便..
by catalyticmonk at 17:51
その力が国民にはあるから..
by catalyticmonk at 17:32
総理は社長かもしれません..
by きょうかいな at 22:42
ども(・Д・)ノ
by catalyticmonk at 18:36
本当の自分の強みや弱味っ..
by 双子ママのErin at 22:46
なんかどことなく高円寺の..
by catalyticmonk at 19:34

メモ帳

最新のトラックバック

venushack.com
from venushack.com
venushack.com
from venushack.com
http://while..
from http://whileli..
http://www.v..
from http://www.val..
呪術師,寄合,メディア
from 哲学はなぜ間違うのか
シールズ関西のブログ記事
from 御言葉をください2

ライフログ

検索

ブログパーツ

最新の記事

もののはっきり言えない日本人
at 2017-09-23 05:36
癒着と平等
at 2017-09-07 00:12
女は怖い
at 2017-08-21 00:29
秘訣は変わる
at 2017-08-21 00:17
気が遠くなる幸せ
at 2017-08-21 00:02
「神」という呼び方についての私見
at 2017-08-16 00:33
従順な冷酷
at 2017-08-15 21:09
アイドル文化について
at 2017-08-08 02:04
既存の左翼文化・自称リベラル..
at 2017-08-08 00:40
他人の不幸は蜜の味、という言..
at 2017-08-04 00:02
生命倫理としてのガン
at 2017-08-03 23:47
繰り返さないために忘れてはな..
at 2017-07-26 00:42
ゴシップ嗜好と日本の民主主義
at 2017-07-21 20:50
自己アピールとひがみ
at 2017-07-21 20:37
ひとと違う意見は罪な国
at 2017-07-21 20:14
自己啓発本の罠
at 2017-07-21 20:00
トンデモさん
at 2017-07-21 19:41
民主主義未満
at 2017-06-19 01:29
自由と命の爪跡
at 2017-06-19 00:11
市民共闘
at 2017-06-18 06:07

外部リンク

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

健康・医療
哲学・思想

画像一覧