カテゴリ:湯宿ファンタジー( 1 )

四万温泉郷の迷宮

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上図が迷宮の見取り図。
まあ、実際はこんなものくらいで把握出来る内部構造ではない手ごわさが男の少年心をくすぐってワクワクさせられる。
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e0296801_13141665.jpg湯治旅行

私は遺伝的にもリュウマチの祖父と膠原病の母、おまけに超・癌家系の父方と色々揃っていて、かなり免疫不全気味だ。山歩きや筋トレをしているので体力こそまだいくらか保持しているものの、齢若干41にして健康からは程遠い。
というわけで、とにかく私が湯治に行かない手はない。そこで四万温泉郷へ。
ド渋くて、でも過剰開発になり過ぎていない程よい頃合いで適度に快適で、ナイスな湯治場だった。

四万温泉は無料の公衆浴場もたくさんあって、四万川沿いに南北に細長く広がる四万の温泉街を入浴セットを持ち歩きながら散策するのはちょっとした遊園地気分だ。
e0296801_154891.jpg宿泊先は、ジブリのアニメ映画「千と千尋の神隠し」の舞台のモデルにもなった老舗の積善館に連泊。最近、知人がフェイスブックにここの記事を載せていたので、問い合わせてみたらなかなか安いので予約しておいた。

その積善館の館内が迷路のようで趣きがあって非常に面白かった。元禄の四年に建てられた、日本最古の木造湯宿建築でもある。本当にこの宿には泊まって良かった。湯宿ファンタジー満点なのである。
山の斜面に建っているのと木造施設の古さがあいまって夜中は山小屋に泊まっているような風情が堪能出来るし、麓側から上に本館、山荘館、佳松亭と急階段でつながっているのだが、それが何というかサンダーバードの秘密基地のようなのだ。それぞれの館内に幾つも別の浴場と宿泊施設があるし、一番上層の佳松亭には別のフロントがあって、さらにそこの前まで別の車道が通っている。
佳松亭は近代的な高級ホテルといった雰囲気で、立派なラウンジや土産物屋があり、会席料理が用意されていて、設備も本館から比べたら別世界なほど豪華である。
そこに森林浴が楽しめる露天風呂もあるので、私は江戸時代から変わっていない重要文化財の本館側から浴衣姿に手ぬぐい一丁で行くのだが、タイムマシーンに乗って突然別の時代に行ったような気分だ。帰りはまたエレベーターと階段で一、二分で自分の部屋に戻れる。毎日振動で土壁の粉が崩れてきて、布団や荷物すべての上に落ちてきて、障子の小窓を開けたら木造の急階段を上から見下ろせるような部屋に。

e0296801_1433494.jpg日がな一日あちこちで湯に浸かる湯治生活を始めて一日二日経つと、疲れがどっと噴き出してきた。四万温泉の解毒効果はバッチリと見た。ただ、お腹が妙にゆるくなって、これも解毒作用なのかも知れないけれど、慢性腸炎なので、やや厄介だった。寝込む時間が長くなってしまうからだ。原因自体に徐々に効いてきてくれたらいいんだけど。
また、体中の悪い部分が痛だるくなって、朝も腰などのだるさで目が覚めるのだが、実のところ、快眠の上に早寝早起き、体の動きも何かと違う。そしてなんだか食べたいと体が思うものが急激に変わってきて、自分でも不思議だ。
積善館で朝夕に湯治客用の弁当をもらっていたのだけれど、野菜たっぷりで出先の行き当たりばったりな食生活の中で非常に助かった。これを保険に温泉街の飲食を楽しむという感じ。

e0296801_1514723.jpg周辺の食事は山菜蕎麦とか川魚とか、定食屋に入ってもカツ丼とか何のひねりもないんだけど、一々味がちゃんとしていて美味かった。
東京でビックカメラとかヨドバシカメラの上のレンストラン街で一杯千円もする蕎麦食べたって大概あんなに美味しくない。群馬の田舎の素材の勝利というか、企業戦略で食産業も動かされ過ぎているから毒まみれというか。なんかバカバカしいな、と改めて思った。




御夢想の湯・日向見薬師堂

e0296801_14302427.jpg四万温泉発祥の地、御夢想の湯にも入った。中が狭いし、お湯がメチャクチャ熱いが、箱の中のような風呂場から森を見ながらの入浴は自分の好みにピッタリで、思わず顔がにやけてしまうほどだった。
本当に熱かったけど沁みたね。

御夢想の湯と日向見薬師堂の間にある東屋に可愛いわんこ発見!
日向見エリアにあるここまでは新湯エリアから徒歩で30分ほど。
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e0296801_14324547.jpg日向見薬師堂。
鳥獣魚供養塔というのがあって、ちゃんとお魚さんまで入れているのがエライなあ、と思った。
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御夢想の湯の目の前に日向見薬師堂がある。




積善館
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この建物部分が元禄の湯という昭和五年建築の浴場。タイル張りでカプセルみたいな狭くてレトロなサウナがあって、タイル張りのリクライニングシート型の内部に一人ずつしか入れないサイズで入り口も押入れのふすまを三分の一くらいにした大きさ。
直球で母胎回帰願望を満たしてくれるような空間で、とても落ち着く。

e0296801_1435473.jpg急階段だらけ。そして、窓から見える景色は森か川。





私の宿泊部屋は本館三階で、真下の四万川を見下ろす景色がお気に入り。
やはり寝込んでいる時間も長いので、狭い館内だけでもレトロで風情があって楽しめたり、部屋の眺めがいいのは退屈知らずでとても助かる。
ただし、WiFiの接続は悪い。近くのグランドホテルの喫茶店がバッチリなので問題ないが。
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部屋から四万川を望む。
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e0296801_1439984.jpg積善館は、斜面の茂みも窓から手に届く庭、といった風情。


e0296801_14553122.jpg吉永小百合だの西田敏行だの、とこの旅館に来る客は著名人も多いようだが、泊まっているとそれが信じられない。ユル過ぎて。




私が育った母の実家も田舎の旧家だったので、子供の頃はまだこんな感じだった。半地下の納屋や土蔵、境界の曖昧な離れと裏の茂みに埋もれた破屋、倉庫の屋根裏部屋から瓦屋根の上に出て空を眺めた日々…それらは今は過去の思い出でしかなかったのだが、ここに来たらそれが今も目の前にあって懐かしかった。コンパクトな空間の中に小宇宙が感じられる、という設定こそ私のルーツだ。
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本館と山荘の間。

e0296801_14473777.jpg本館と、その上層の山荘をつなぐ渡り廊下。
積善館の周囲は普通に山の斜面の茂みで、虫の音も豊かだが、そこら中の窓が開け放たれていて、旅館に泊まっているのに、まるでキャンプに来た気分。

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自販機の前のソファーが置いてあるスペースも館内の薄暗さと窓の外の山の緑が両方堪能出来るので、お気に入りスポットになってしまった。











e0296801_14405580.jpg正真正銘の迷路。古い上に山の斜面に増築を繰り返した結果だろう。


e0296801_14411427.jpg右写真は一階の食堂に続いている階段。

四万川が見えて草が窓の外を縁取っているナイスな窓が、単に従業員の生活用らしく、またそれがうろついているだけで行けてしまう、隠されてもいない空間にランダムに出現する。このユルさと優雅な趣味が渾然一体となっているところにも感心する。
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e0296801_14414380.jpg本館から山荘側へつながるエレベーターもある。洞窟みたいで、ここも普通じゃない。






ホント、佳松亭は品のいいスパみたいで、本館から来た時のショックはでかい。それが面白くって楽しいのだが、ここの旅館の家族はそれを分かってやっているのか、単に素なのか?
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佳松亭の杜の湯もヒノキや森の薫りが立ち込めていて素晴らしい。
露天風呂は実際森の木々の真下なので、湯船に蛾とか落ち葉とかいろんなものが落ちてくる。しかし湯は入れ替えが速いのか、きれいで汚くない。
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元禄の湯の先に祠を発見。お湯が祠の横を流れていて、ここの氏神様なんだろうか?

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元禄の湯横の祠から山荘を見上げる。

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本館は夜はフロントも閉まってしまい、湯治客は勝手にヨロシクやってくれ、といったノリ。なんか本当に気楽な宿でいいなあ。
さて、夜の温泉街に繰り出すぞ!というところでパチリ。e0296801_1552854.jpg







江戸時代には一階部分が家族用で、本館二階のここらに大名まで泊まっていったそうな。
権威主義の嫌いな自分だが、金のないところには歴史の足跡が残りにくいのも事実。時の流れや母国の文化・歴史の変遷を、ただ眼前にある現代社会という観点以外からも捉え直せる機会を与えてくれる場所は、やはり貴重だし面白い。
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e0296801_15188.jpg山荘の湯。これもまたレトロ。貸し切りなので撮影しやすかったし、具合の悪い時はここの方がゆっくり体を洗える。
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山口エリアも安そうな湯治宿がたくさんある。滞在が長引くならこちらに移動した方がいいんだろう。
つげ義春的な旅情が溢れる。


e0296801_14334612.jpg川魚料理店があったので入ってみたら、イワナやヤマメが旨いこと、旨いこと。一人で三匹も食べる。
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花の命は短いが、咲こうが咲くまいが生きているだけで花。
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とにかく昼も夜も浴衣一枚でちょうどいい気温で涼しい時節だった。
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by catalyticmonk | 2013-09-07 23:45 | 湯宿ファンタジー | Comments(0)


溢れ出る部分を勝手にやっています。異端者のあなた、多分私はあなたの味方か仲間です。 河元玲太朗


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