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資本主義という言葉と、支配なき平等で人間らしい社会の間に

私の書いた「『支配構造そのもの』がもたらす格差・貧困と究極の人権破壊=戦争」という記事に対して、
「ここで問題とされている戦争の根本原因である人間の支配構造の基本は、『人間の競争心』に由来し、『人間の支配欲』の 根源は、競争を基本原理とする競争社会である資本主義の社会構造に原因がある。だから僕は、すべての戦争が起こる根本原因は、資本主義社会そのもののせいだと思う」
というコメントを寄せて下さった方がおりまして、慎重に返答しようとすると、私が何か言葉にしたいと考えていたところとも被るので、短くは答えようがないテーマです。なので、別途記事投稿で回答しようと思います。

私もその意見に意味合いとしては異論がないのですが、かつて資本主義社会と対抗するのに有効な手段と認識され、冷戦下で様々な戦争を起こした一言で「社会主義陣営」と括られているものへの悪印象があるせいで、「資本主義」というものを問題視する視点そのものが、相手に忌避感を抱かせてしまうような社会風潮は小さくない、と感じています。
なので今の日本の中でポンと「資本主義社会のせいだ」、と言ってしまうと、伝えたい部分の中身がなかなか広がっていかない現実があるとも考えています。

人権意識や平等性の大切さ、真の民主主義、ということを考えていったら、もちろん経済の問題にも行き着きます。
そこら辺の認識を私なりにクリアに整理して、支配や抑圧のない平等な社会へと皆が手をつなぎ合える小さな一歩となるような何某かの輪郭を模索してみたいと思います。


そのコメントを寄せられた方は日本共産党の党員の方のようですが、例えば日本共産党でもまず資本主義の枠のなかでの民主的改革の実現を目指す、と言っています。
共産党の党綱領を読ませて頂いても、その先の将来の展望として、資本主義の矛盾を乗り越えた社会への前進、人間が利潤追求の道具になる資本主義経済の弊害の解決を目標としていますが、方法論としては弁証法的に柔軟に臨もうとされています。
私自身が日本国内の革新政党についてどう考えているかは、また後で述べますが、私も共産党どうこう以前に弁証法的な方法論がとても大切だと感じます。


まず、経済システムが観念を規定するとし、歴史の発展は経済構造によって基礎づけられていると考えたカール・マルクスという人物がいたのは皆さんがご存知の通りです。前者の考えはヘーゲル哲学を唯物論的に解釈し直したもので、後者の考えは弁証法哲学を歴史理論に応用したものです。
共産党の元トップということにとどまらず、日本の社会主義研究の第一人者でもある不破哲三さんの「科学的社会主義を学ぶ」という著作には、マルクス、エンゲルスは将来の歴史は将来の人々に任せる、「歴史に命令しない」という原則的な立場を堅持したということは非常に賢明なことだった、といった言及があります。
20世紀の社会主義運動の興隆を用意した思想家であるマルクスは、未来社会と言うものは、将来、人間が利潤追求の道具になる資本主義経済の弊害を乗り越えた社会づくりが現実の問題となった際に、その時代の人間が、その時の歴史的な条件のもとでつくってゆくものであって、何かの青写真や設計図が固定的にあらかじめつくられていて、それに沿って社会を組立てていけばいい、といいうものでは絶対にない、と極めて聡明に考えていた。
それが弁証法的方法論というものです。

ところが、いち早く革命に成功した旧ソ連は、特にスターリン時代以降(私個人は一党独裁を正当化したレーニンにも様々な問題があるという認識でいるのですが)、明白に社会主義とは無縁な「人間抑圧型」の専制国家に変質してしまいます。
それでも社会主義を標榜していたはずの大国が、社会主義の反対物に変化したというところまで認識をつきつめられない傾向が、冷戦下の東西対立の煽りもあって続いてしまい、ソ連型の社会主義が世界の社会主義のスタンダードであるかのような固定観念が国際的にも広がってしまった訳です。
これが未だに尾を引いて、マルクスが固定観念に縛られて世界の現実をあるがままに見ないことを否定した、柔軟な弁証法の思想家であったことが忘れ去られ、社会主義と言えば旧ソ連や中国の文化大革命のように自由と民主主義を脅かす専制主義を目指すものだ、という、冷戦時代の亡霊に取り憑かれたかのような誤った見解が根深く広がってしまっています。


日本に現存する革新政党で見ていくと、日本共産党は党綱領で「『社会主義』の名のもとに、特定の政党に『指導』政党としての特権を与えたり、特定の世界観を『国定の哲学』と意義づけたりすることは、日本における社会主義の道とは無縁」と明記しているので、ソ連型の社会主義を標榜していないことは明らかです。

また、社民党はその名の通り社会民主主義です。
この党は色々と折衷主義的で調べてもなかなかこうだ、というものを断定的に言い難いものを私は感じるのですが、良く捉えるならば、それだけ個人個人の裁量に委ねられていて、組織として柔軟だ、ということかも知れません。
歴史的には社会民主主義は革命主義的マルクス主義との対比で語られてきたものですし、社会民主主義が実施されてきた国では、ソ連型社会主義の現実と比較して、経済の発展と実質・実態としての政治的・経済的・社会的な公正や機会平等、人権保護、環境保護を実現または追求するとともに、国際協調と国際社会との共生を追求してきています。

西欧では、社会民主主義政党が保守主義政党と並ぶ二大勢力として政権交代を繰り返し、北欧では、社会民主主義政党が長期間政権を維持・運営した実績が大きく、市場社会主義・議会制民主主義の中で福祉・環境・医療などを重視した政策を実施しています。
冷戦終結後に欧州連合に加盟した東欧諸国でも、社会民主主義政党は主要な政治勢力の一つであり、社会民主主義政党が政権を維持・運営した実績があります。
また、社会民主主義や民主社会主義を掲げる中道左派政党の国際組織・社会主義インターナショナルは、ドイツやフランスなど加盟政党が与党である国がヨーロッパの主流と呼べるほどで、社民党前党首で現副党首の福島みずほさんは、その副議長です。
個人的にもみずほさんの、民主主義を体現したかのような気さくで優しく誰に対しても公平な、人間味あふれるお人柄は尊敬して止みません。


ところで、私がどこの党にも所属していないのは、きちんとした理由があります。
特定の政党に所属して、それを通した活動で社会貢献されている方々には素直に敬意を抱いていますし、私も相互扶助の確立された連帯は喉から手が出るほど欲しいのですが、自分にささやかにでも出来得ることを真摯に考えて、無党派という選択をしているのです。
どこかの党に所属するとそこの看板を背負って発言しなければなりませんから、個々の時事の事案に対して発言して民主主義的なものの見方を自分なりに発信して対話していく、という作業において、どうしてもフットワークが軽くはなくなりますし、そこで為された決定や選択が私自身の考えと細部まで合致し続けていくかどうか自体も分かりません。
また、私の宗教などへのものの見方は、いわゆる左翼思想の主流派とはトーンの違う部分がある、と自分で感じています。私も無宗教なのですが、宗教の精神衛生的、道徳的価値をもっと評価しているのかも知れません。
それでも社会情勢や個人的事情次第でそうした条件と選択の優先順位は諸々流動的に変わってくると思いますし、まさに弁証法的にその時その状況に応じて判断していくべきことだと思います。


高福祉社会を実現している北欧のデンマークでは、およそ80年前にJante Lawという教えが当時の文筆家、アクセル・サンダモセによって説かれ、それが社会に普及することによって高福祉社会になれた、と聞いたことがあります。平等意識についてシンプルに分かりやすく、しかし深い感覚で伝えている教えだと思います。

基本的には10の教えからなっています。

1. You're not to think you are anything special.
(自分を特別であると思うな)
2. You're not to think you are as good as us.
(自分が相手と同じくらい価値あると思うな)
3. You're not to think you are smarter than us.
(自分が相手よりも頭がよいと思うな)
4. You're not to convince yourself that you are better than us.
(自分が相手よりも優れていると思い上がるな)
5. You're not to think you know more than us.
(自分が相手よりも多くを知っていると思うな)
6. You're not to think you are more important than us.
(自分が相手よりも重要であると思うな)
7. You're not to think you are good at anything.
(自分は何かが得意であると思うな)
8. You're not to laugh at us.
(相手を笑うな)
9. You're not to think anyone cares about you.
(相手の誰かが自分を気にかけていると思うな)
10. You're not to think you can teach us anything.
(相手に何かを教えることが出来ると思うな)

どの言葉も全員平等の人権意識に満ち満ちています。
どんな人も平等であるから、特別意識を持ってはいけないと戒めている訳です。
こうした概念や価値感が、市民全体に行き届いているから、貧富の格差が少ない、高福祉高負担の社会が可能になった、とされています。
確かに、私もインドで暮らしている頃に北欧の方とも大勢知り合い交流がありましたが、デンマーク人、スウェーデン人あたりの人権意識や民主主義の根付き加減はレベルが違うように感じました。

ただ、端的な言い回しの分、日本の文化にはそのまま適用しにくいかも知れません。
例えば何かを教えることが出来ると思うな、とは、自分が人に教えてやるんだ、なんて偉そうに考える意識を持ってはいけませんよ、というメッセージだと思うのですが、今の人権思想に馴染んでいないような日本人は、そもそも自分で考えることに慣れていないので、なかなかそういう意味合いを汲み取れない面があると思います。
早期人権教育の必要性まで一緒くたにして、じゃあ、教えなくていいんだな、と短絡的に解釈するのがオチかも知れません。現段階での文化環境の問題として、そういったことはある気がします。
自分が相手よりも多くを知っていると思うな、の精神も、客観的に分析する判断力を放棄しろ、と言っているのでもありません。知識を以ってして相手を威圧するような尊大な態度を相手に示すのは人間として卑しい、ということを伝えようとしているのだと思います。この辺、へりくだりの強要を集団圧力で行なって自己主張を禁じるような封建的風土が残っている日本では、さらに誤読される可能性が高いのではないでしょうか。


誰かに何かを押し付けてはダメだけれど、やはり単なる個人主義で社会的に分断されていっても力の強いものに支配される、無関心が民主主義を殺してしまう、そういった危険が現実味を持って迫って来ている日本の現状の中では、みんなで共有する社会という場に対して、私もあなたも平等に共有している生活空間なのだから、もっとこうでなければいけないんじゃないの、こうしたいと思いますよ、といった意味での議論、対話、あるべき教育というものを模索していく行為は、やはり必須なのだと私は考えます。
様々なアプローチで意識改革を促す様々な活動、創意工夫が為されていくのが大切なのではないでしょうか。
そうした時に、左翼思想が語ってきたこと、及びそれに関連する運動体が行なってきたことなどに、色眼鏡をかけて見過ぎて、連帯の幅を狭めてしまう、或いは真っ当な当たり前の意見でもどこの政党の誰が言っているかにマイナスな先入観を持ち過ぎるあまり、社会の平等性を追求していく上での確固たる枠組みを筋道立てて考えられない、などといったことがあったら損だと感じます。

きっと私とあなたは考えること、良かれと思って信じることは違うかも知れません。
だけれど、色眼鏡抜きにして、一個一個の中身を当たり前な真っ当な筋道を確認しながら対話していったら、互いにより良いアイデアが何かしら生まれるのではないでしょうか。
そうした精神でいくのが民主主義だと思うのです。ただ、支配なき平等で人間らしい社会を私は望むばかりです。皆さんは何を望まれるでしょう?


追記:
新社会党のことは書かないのですか、といったことを仰る方もいらしたのですが、国内の左派の運動を俯瞰しようとまでは考えていなかったので、そこら辺はそれほど詰めて調べなければいけないと考えなかった、といったところです。まず、単純に私が直接内部の人たちとも交流があり、ある程度は確証を持って書ける革新政党の範囲が社民党や共産党だった、というのもあります。
ここで主眼とするところは、福祉社会や競争社会的でない世界の追求を、左翼的な理念や運動への先入観とセットになった資本主義社会の現状への諦めによって上手く思い描けないような、この社会に蔓延する人々のモヤモヤした気持ちの部分に、何か程良く理性的にメッセージを送るとしたらどうしたらいいのだろう、といった部分での素人なりの拙い模索です。
それを、断定的な結論は示さずに左翼運動外部の人と、内部の人たちに投げかけてみているのです。不遜の愚は百も承知ですが、沈黙しているよりは何か言葉にした方がいい事柄だと思うのです。
by catalyticmonk | 2015-03-14 11:05 | 希望社会 | Comments(0)


溢れ出る部分を勝手にやっています。異端者のあなた、多分私はあなたの味方か仲間です。 河元玲太朗


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